適当な性格のせいで生命の危機(その1)

ここ2週間で僕の今までの生活が崩壊した。僕は何に対しても適当な感じで、社会でどんどん落ちこぼれていくようなタイプの人間なのだけど、追いつめられる度になんとかやってこれまで生きてきた。しかし、さすがに今回は追いつめられすぎてとうとう人生が詰んでしまったようで、ほとほと参っている。


まず、僕が大学に入ってすぐに奨学金を貰い損ねたのがいけなかった。奨学金というものは、4月の入学してすぐの時期の募集を逃してしまったら来年まで待たなければ特殊な環境の人間以外貰えないという仕組みらしく、1年間奨学金なしで凌ぐことになった。僕は学費が安く大学に入学することが出来たので親もそれなりに仕送りをしてくれるのかと思っていたら、親からの仕送りは月2万円、さらに奨学金がないために学費を振り込むのにもいっぱいいっぱいで、余分な金はいっさい払わないので家具も自分でバイトして買えということになった。机と椅子をそろえるのに半年かかり、未だにほとんどの家具の代わりをダンボールがつとめている。自業自得なのだがこの時点でかなり難易度が高い大学生活を要求された。


バイトをすればなんとかなるだろうと簡単に考えていたのだが、学生街なのでバイトが飽和状態でなかなか見つからない。大学生は暇だとか思っていたのだが、全くそんなわけはなく、新しい勉強分野に必死でついていくためになかなかバイトをする暇も見つからなかった。半年すぎた先月になってようやくバイトを始めることができた。


生活費月2万円というものは本気で無理ゲーで、食費を一日に600円程度に押さえなければならなくて、ちょっとした出費が出るだけで家計が崩壊するという綱渡りのような生活だった。なにかイベントで金を使わなければいけなかったりする時は祖母からのお小遣いなどをやりくりしてなんとか凌いでいた。そして、夏に自動車学校に行き、本格的に貯金が0円となって月2万円生活がますます厳しくなっていく。


先月はバイトを始めて大学の勉強に加えていろいろな勉強を頑張った月で、かなり忙しかった。忙しいにかまけて夕飯を学食で食べたりしていらない出費をしてしまい、月末は全財産が1000円ほどだったのでキャベツを大量に食べて飢えを凌ぎつつバイトをこなしたりしていた。その月末に事件は起こる。


僕の生命線とも言える自転車を盗まれた。自宅で鍵をかけていたのにも関わらず盗まれてしまった。大学に行くにしてもバス代がない。家に帰ってスーツに着替えるために、自転車を全力で漕いでギリギリ間に合うようなハードスケジュールでバイトに行かなければならなかったので、自転車がないとバイトに行けない。自転車を盗られるだけでもうどうしようもなくなるのだが、買うお金などあるはずもない。仕方ないので、友人に無理を言って自転車を借り、大学の近くの友人宅に寝泊まりをすることになった。大学にパジャマのまま行ったり、スーツのまま何時間も歩いて家と友人宅を行き来したりした。


結局自転車がないとどうしようもないので、親に頼んで自転車代を出してもらうことになった。僕は一年浪人をしていて、年子の兄が私立に行っているのにもかかわらず自分も私立に行かなければならなくなったので、親にお金を出してもらうことがとてもストレスに感じる。なので親からの自転車代というのは僕にとってはかなり重いお金だ。そして、そのお金15000円を入れた財布を落とした。


分単位で走り回らなければ行けなかったその一週間で僕は疲労困憊しており、ただでさえ適当な性格の僕が財布をなくすことはあまりにも簡単だった。無くしたことに気づいたとき僕は発狂したように叫んで、頭が真っ白になり何を見てるのか全くわからなくなった。自分があまりに情けなくなって泣きたくなった。とりあえず、自転車を買うことができないので、友人宅にまた泊まりにいった。


つづく