googleが自動運転自動車で狙っているもの

友人とgoogleの自動走行車に関して話していたんだけど、頭の髄までエンジニアの友人に俺の言いたかったことが伝わっていなかった気がするので、ここに書いておく。googleの自動走行車は決してエンジニアの趣味ではなく、googleが狙っている次のビッグビジネスだ。


googleが自動走行車を作ろうとしたきっかけがどのようなものだったかは知らない。創業者達の趣味だったのかもしれないし、google mapでデータを集める際にでてきたサブプロジェクトだったのかもしれないし、親友を交通事故でなくしただとかそういったストーリーが本当にあったのかもしれない。しかし、いまのgoogleはこのプロジェクトの大きな可能性に確実に気づいており、そして、その可能性を現実化することにリソースを割いているはずだ。


その可能性とは究極のO2Oモデルをつくることだ。googleはユーザーに欲しい情報を瞬時に与えることに特化してきた。ユーザーが求めている情報と合致する広告を出すことによって、巨額の金を得てきた。しかし、これまでのそれはオンラインの中だけの話だった。いま、急速にオンラインでの情報をデザインすることによってオフラインでの行動をコントロールすることへの関心が高まってきている。googleO2O戦略はこうだろう。ユーザーがオンラインでなにか情報にあたって、行きたい場所ができたときに、すぐにその場所までユーザーを連れて行く。


これの第一歩はgoogle mapだった。抜群に使いやすいmapで、ユーザーは行きたい場所の位置がわかるようになった。二手目はルート案内だ。ユーザーは初めての土地でも、行きたい場所さえ入力すれば、googleが細かく道順を教えてくれることになった。ストリートビューでの写真付きである。そして、今回、これを自動走行車が完成させようとしている。目的地さえ入力すれば、あとは自動的に車が連れて行ってくれる。そこに迷う余地は存在しない。


これが完成したとき、ビッグビジネスが見えてくる。googleはユーザーがリアルタイムで求めている情報を瞬時に推薦するシステムを作ろうとしている。google nowだ。これはおそらくtwitterが初期の頃から目指していたものなのだろうけれど、やはりというか、googleが作ってしまった。ここで、ランチを探しているユーザーに美味しいレストランを推薦する。目的地の場所と推定時間を算出し、「目的地までgoogle carで行く」のボタンをタップすると、自動走行車が来て、連れて行ってくれる。交通費は限りなく無料に近くなるだろう。すべては広告で賄うためだ。googleはこのシステムの完成を狙って自動運転自動車を展開してくるはずだ。google glassも同じ流れで展開されると考えている。


ここまで考えるとわかると思うが、googleは自動走行車の販売はしないはずだ。レンタル駐車場チェーンでも買収して、全世界にgoogle所有の自動走行車をばらまき、次世代タクシーとして展開する。値段は公共の交通機関よりも安く設定する。スマホで目的地を入力したら自動的にかかる時間と値段を算出し(無料に近くなると思うが)自動的にクレジットカードから引き落とされ、すぐに現在地をもとにして自動走行車がやってくる。車での移動という行為が限りなくシームレスになり、自動車を所有するよりも利便性を高めてくる。感覚としてはすべてのgoogle carをユーザーがシェアするという感じになるはずだ。これはgoogleにとって、ユーザーの移動情報を収集するということでもあるし、交通をプログラム可能にするということでもあるし、ひいてはユーザーの行動をデザインするということになる。


こうなってくると、虐殺されるのはタクシー業界だけではない。自動車メーカーもgoogleに殺される。もう自動車を買うという行為は、奇特な趣味となり、googleが世界の自動車製造を独占するようになるだろう。もちろんgoogleは自動車製造で利益を出す必要はなく、ユーザーを自動車で移動させることによって利益をだす。いまgoogleapplesamsungに対してnexusでやっていることと考え方は同じだ。


googleは本気でこの市場をとりに行っていると思うし、いまのところgoogle以外にこの市場を狙っているプレイヤーはいない。