「チーム・バチスタの栄光」を読んだ

チーム・バチスタの栄光(上) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 599) (宝島社文庫)


春休みに入り少し暇ができたので久々に小説を読んだ。家から持ってきた親の本が大量にあるので、その中から面白そうだった「チーム・バチスタの栄光」を朝一で手に取って読んでみた。久々にネットから解放されてゆっくりと読書をすると、とても時間が長く感じられ、充足感に満たされた。春休みは朝一番にパソコンの電源をつける癖をなおして、まず本を手に取るようにしたいと思う。


この本は話題作だということは知っていたのだが、医療に関するミステリー小説だったとは読み始めるまで知らなかった。「チームバチスタ」と言われても医療チームだと想像できるはずも無く、サッカーチームだとかの話だと思っていた。読み始めてすぐに「ラノベっぽい」と感じた。言い回しや比喩表現がやたらと多く、面白いと感じることもあれば、何となく読み手が恥ずかしくなるくらいにやりすぎな比喩表現もあった。


チーム・バチスタと呼ばれる最高の手術チームに不可解な失敗が続く。それを秘密を裏に万年講師の田口が調査していくというストーリーだ。売れているだけあって、ストーリーは新鮮でエンターテイメント性が高い。大学病院の冴えない講師である田口が、極秘任務を引き受けて人との対話形式で調査をしていく。上巻では田口が受動的なカウンセリング形式で調査を進めていくのだが、下巻に入ると田口とは対称的な白鳥という男が攻撃的に調査をしていく。基本的に人との会話をもとに分析していく形式でストーリーが進んでいくため、同じ人への調査が入ると読者は飽きてしまうのだろうが、田口と白鳥の調査の仕方が全く違うので、対象者も異なった反応を見せてきて面白い。田口の調査のときにはおとなしかった人物が、白鳥の調査では攻撃的な一面を見せてきたりする。その変貌を分析して、真実をつきとめていくのだ。


今流行の病院ないの権力抗争もコミカルに描かれている。出世に興味の無い田口が皮肉にも出世していってしまう様子や、権威主義老害が出し抜かれる様子などが喜劇調に描かれており、エンターテイメント性を高めている。作者は勤務医だというから、まさにこの小説は医者の書いた「ものがたり」なのだなと実感する。ユニークなキャラクターや、ジョークのような会話で物語が綴られていく。最後の事件後の加速感が一番この小説で楽しめた。


薄くて読みやすい内容だったので、売れるのもうなずける小説だと思った。