「綱ヨリ」を探しまわる子ども達

母の田舎に帰省する途中に面白い話を母から聞いた。母の田舎では、夏祭りのときに村民総出で綱引きをするのだそうだ。その綱は男手が集まって一から編んでつくっていく。そして女手は飯をつくったりお茶を用意したりと男手のサポートをしなければならない。村中が大忙しになるので子ども達にかまってやる暇などなくなってしまう。だから大人達は子ども達に「綱ヨリ」を探してきてもらう。


「みんなちょっと集まって!綱ヨリがないから中村さんちに行って、みんなで綱ヨリを借りてきてちょうだい」子ども達はぞろぞろと中村さんちに「綱ヨリ」を借りにいく。「あー、綱ヨリなら丁度いま坂本さんちに貸したところだよ。坂本さんちに行ってくれないかい?」と中村さんちで言われる子ども達。仕方ないので坂本さんちに歩き出す。「ごめんねえ、綱ヨリはゴロちゃんが持ってっちゃったから、ゴロちゃんちに行ってくれないかい?」


もちろん「綱ヨリ」なんか存在しない。村中総出で子ども達をたらい回しにするのだ。夏の田舎道を子ども達が歌を歌いながら楽しそうに「綱ヨリ」を探している風景が大人達はたまらなく好きだったらしい。そんなこんなで「綱ヨリ」は見つからないまま綱は完成する。子ども達の歩き疲れはどこへやら、村総出の綱引き大会が始まる。田舎の夏は楽しそうだ。