四畳半神話大系のアニメが素晴らしかった

原作のファンであったので割と毎週楽しみにしていたのだが、ついに完結し、おれの楽しみがひとつ減った。初回を観たときは、ストーリーがかなり削られていて「原作レイプになるのかな」と思っていたが、完結してみれば、原作ファンも舌を巻くほどのクオリティの高さで、最終的にすべてがつながっていく様はもしかしたら原作を超えているのかもしれない。超えているのかもしれないと書いたが、すでにある原作のアイデアをブラッシュアップして臨んでいるのだから、超えていて当然でもある。


基本的には一話完結の平行世界ループもので原作通りなのだが、アニメでは世界観を崩さずにオリジナルストーリーが加えられており、そのオリジナルストーリーも「ひとつのエピソードを選択肢分岐で多角的に演出する」というこの作品の醍醐味を忠実に守っていて、素晴らしい仕事をする人たちもいるものだなあと感心した。独特の台詞回しはおそらく脚本家が書いているものなのだろうが、森見登美彦の作品を読み込んでいるのだろうなと思わせる出来だった。随所に他の作品のパロディなどもでてきて、なかなか世界観が広がっているではないかと思った。


一つ残念だったのが原作での「もちぐまの旅」が再現されていなかったことで、エピソード間をもちぐまが旅して明石さんのもとに戻るというこの作品の肝ともなっているアイデアが削られていた。これはエピソードが多いので複雑になるのを避けたためだろうし、もちぐま自体は最終的に別のキーアイテムとして働いているので死んでいるわけではないのだけれど、個人的に好きなアイデアであったので残念だった。


しかし、オリジナルのストーリーや最終回の演出など、アニメならではの凄みがあり、普段アニメを観ないおれにも「アニメってすげえんだな」と言わせるだけのものがあった。アニメにしかないオープニングやエンディングを使った演出などには唸るものがあり、この作品の完成度を確固たるものにしていた。今後もこのようなアニメが出てくるのならばたまにアニメの世界に浸るのも良いなと思った。


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